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| 部屋々へと導かれる、その小径を歩むよろこび。 深山と町中の風情を持ち合わせた景色のなかで。 |
| まだ砂浜も松林も古町に迫るほど広かったころ、江戸の中期に松林のなかの茶店として始まった行形亭。なるほど、門をくぐった藤棚のあたりには、いまだ茶店ののどかさが漂う。そこはまた、二千坪の庭の入り口。樹齢数百年の黒松をはじめとする古木や草花が育ち、まるで深山の赴きだ。すべて離れのごとく入り口を違えた部屋からも、もちろん、この庭や親密な中庭が眺められる。 行形亭の名の由来はかつての主人にあった。芝居の大石由良之助のように意気な人であったことから、誰彼となく「いきなりや」とあだ名のようによぶようになり、それが今の名となったという次第。 座敷に座っていると、老舗とよばれる敷居の高さに比して、なぜかわが家のようなくつろぎ。気どりのない接客やあねさまの新潟弁のゆえだろうか。包み込まれる楽しい時間が、この料亭のもてなしだ。 |
| かしわの味噌漬 名物料理のひとつ、かしわの味噌漬。漬けた後、油で煮るように素揚げする一品で、行形亭が料理屋となった明治の初めころから供されてきた。 | ![]() |
| 鳥餅 餅を鴨肉で巻き、炭火で焼いて吸い物のタネとしたお椀。肉の臭みをとるために加えたゴボウが効いている。良縁をとりもつ、という意味に引っかけて考案したオリジナルの料理。 | ![]() |
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| 地元の旬の素材を使った新潟の味に、歴代の料理長がそのつど創作を加えた行形亭の会席料理。「手間をかければよいというものではない」と素材の味を引き出すことに徹する料理人の技は、まずひとつ、口にすれば伝わってくる。よその料理人から「あれはよかった」とたびたび褒められる鳥餅というお椀に日本蕎麦を使ったやきそば。新潟らしいといえば塩漬けにした鮭を干した地川に魚豆(ととまめ)寿司。見た目にも美味なるラインナップだ。 しかし現あにさまの和滋さんは言う。「料理はあくまでも一部」。軸や花などのしつらいに始まり、料理を盛る器や、楽しいやりとり。これらすべてを総合してあるのが料亭、ゆえに料理だけを高らかに謳い上げはしないのだろう。「料理も器も花も軸も思い出せないけれど楽しい気持ちだけが残っている。それがいい」。それでもやはり味は際立つ。 |
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